ギターで使えるオルタードスケールの始め方|指板と短フレーズで即戦力にする

ジャズやフュージョンのアドリブで、独特の緊張感と洗練された響きを加える「オルタードスケール」。しかし、理論が難しそうで敬遠しているギタリストも多いのではないでしょうか。この記事では、難しい理論を最小限に抑え、ギターの指板上で直感的にオルタードを使いこなすための実践的な方法をわかりやすく解説します。

目次

オルタードのスケールをギターで即戦力に変える鍵

オルタードスケールを即戦力にするためには、まずは指板上の形をシンプルに整理することが大切です。理論的な構成音を覚えるよりも、今弾いているコードに対して「どの位置に音があるか」という視点を持つことで、迷うことなくソロに組み込むことができます。ここでは、ギター特有の視点から効率的に習得するポイントを絞って紹介します。

指板上の最小パターン

ギターでオルタードスケールを弾く際、いきなり全弦にわたる長いスケールを覚えようとすると挫折しがちです。まずは、ソロの起点となる弦を絞った「最小パターン」から始めましょう。例えば、5弦や6弦にルートがあるセブンスコード(V7)の周辺で、1オクターブ分だけの形を徹底的に手に覚えさせます。

この最小パターンの利点は、運指を固定したまま平行移動させるだけで、あらゆるキーに対応できることです。複雑なスケール全体を追いかけるのではなく、コードフォームのすぐ横にある「使える音の塊」として捉えることで、アドリブ中の反応速度が格段に上がります。まずは2弦分程度の狭い範囲で、滑らかに弾けるように繰り返してみるのがコツです。

コードトーン優先の音選び

オルタードスケールは「変化した(オルタード)」音の集まりですが、それだけを羅列しても音楽的なフレーズにはなりにくいものです。そこで重要になるのが、コードトーンを柱にすることです。特にドミナントセブンスコードの基本である「ルート、3度、7度」を意識しながら、その隙間をオルタードのテンション感で埋めていくイメージを持ちましょう。

具体的には、3度(M3)や7度(m7)といったコードの性格を決定づける音をターゲットノート(着地する音)に設定し、その前後にオルタード特有の♭9thや#9th、#11th、♭13thを配置します。これにより、どんなに複雑な音を選んでもコード感を見失うことがなく、聴き手にとっても納得感のあるフレーズになります。

ペンタとの組み合わせ

全く新しいスケールとしてオルタードを覚えるのが大変なときは、使い慣れたマイナーペンタトニックスケールを活用する方法があります。実は、オルタードスケールの一部は特定のマイナーペンタと非常に相性が良いのです。例えば、G7オルタードを弾きたい場合、半音上のA♭マイナーペンタトニックスケールの一部を借用する感覚で弾くと、簡単にオルタードらしい響きが得られます。

この「ペンタの置き換え」という手法は、多くのプロギタリストも実践しているテクニックです。すでに身についている指の動きを利用できるため、ゼロから練習するよりも遥かに早く実戦に投入できます。まずは既存のペンタのフレーズの語尾を少し変えるところから、オルタードの響きを混ぜてみてください。

短フレーズでの挿入法

オルタードスケールを曲全体で延々と弾く必要はありません。ジャズの定番である「II-V-I(ツーファイブワン)」進行の「V7(ドミナントコード)」の部分だけに、一瞬だけスパイスとして加えるのが最も効果的です。数拍程度の短いフレーズとして挿入することで、演奏にメリハリが生まれます。

長い音階を上下するのではなく、3〜5音程度の短い「リック(定型句)」として用意しておくのがおすすめです。例えば、♭9thから始まって3度に着地するだけの短い動きでも、十分にオルタードの浮遊感を演出できます。欲張らずに、まずは「ドミナントコードが鳴った瞬間の1拍」に集中して、覚えた音を置いてみる練習から始めましょう。

練習時間の目安

オルタードスケールを無意識に指が動くレベルにするには、毎日の短時間の積み重ねが効果的です。1日1時間みっちりやるよりも、15分程度の練習を毎日継続する方が脳と指に定着します。最初の5分で基本の形を確認し、次の5分で特定のコード進行に合わせてフレーズを弾き、最後の5分で自由にアドリブを試す、といった構成が理想的です。

およそ2週間ほど継続すれば、指板上の特定のエリアでオルタードの音が視覚的に浮かび上がってくるようになります。焦らずに、まずはC7やG7といったよく使うキーに絞って練習を進めましょう。指が形を覚えたら、徐々に違うポジションやキーへと広げていくことで、確実に自分のスタイルに取り込むことができます。

指板で解きほぐすオルタードの構造

オルタードスケールの正体は、メロディックマイナースケールの第7モードですが、ギタリストにとっては「どの音がコードとどう反応するか」を理解する方が実用的です。ここでは、指板上で音の役割を整理し、他のスケールとの共通点を探ることで、構造的な理解を深めていきます。

構成音一覧

オルタードスケールの構成音は、ルート(1)、♭9th、#9th、3rd(M3)、#11th、♭13th、7th(m7)の7音です。通常のメジャースケールと比較すると、多くの音が半音変化していることが分かります。

度数名称役割
1ルートコードの基点となる音
b9フラットナインス強い緊張感を生むテンション
#9シャープナインスブルージーな響きを持つ音
3メジャーサードコードが「メジャー」であることを示す重要音
#11シャープイレブンス浮遊感のあるモダンな響き
b13フラットサーティーンス切ない、内省的な響きを加える音
b7マイナーセブンスドミナントセブンスの骨格を作る音

メロディックマイナーの第七モード

理論上、オルタードスケールは「半音上のメロディックマイナースケール」と同じ音で構成されています。例えば、G7オルタードの音を並べ替えると、A♭メロディックマイナースケール(A♭, B♭, C♭, D♭, E♭, F, G)になります。ギターの場合、この事実は非常に役立ちます。

もしあなたが既にメロディックマイナースケールを覚えているなら、新しいポジションを覚える必要はありません。ドミナントコードの半音上のメロディックマイナーを弾けば、それがそのままオルタードの響きになるからです。このように「既存の知識と結びつける」ことで、学習コストを大幅に下げることができます。

ディミニッシュとの共通音

オルタードスケールは、コンビネーション・オブ・ディミニッシュスケール(コンディミ)ともいくつかの共通音を持っています。特に♭9thや#9th、そして3rd、7thといった核となる音が重なっているため、耳馴染みが似ていると感じることも多いでしょう。

違いは、オルタードには「#11」や「♭13」が含まれ、より洗練された影のある響きになる点です。ディミニッシュ的なフレーズを少し変化させるだけで、オルタードへ移行することも可能です。指板上でディミニッシュの形が見えている人にとって、オルタードはその「少し延長線上にあるスケール」として捉えることができます。

ホールトーンとの重なり

オルタードスケールの後半部分(#11、♭13、b7、ルート)は、ホールトーンスケール(全音階)のような響きを持っています。全音間隔で音が並んでいる箇所があるため、独特の「どこへ行くか分からない不思議な感覚」が生まれるのです。

ギターの指板上では、全音の間隔は「2フレット飛ばし」という非常にシンプルな動きになります。この全音移動の感覚をオルタードフレーズに取り入れると、ジャズらしいアウト(調性から外れる)した感覚を演出しやすくなります。スケールの一部がホールトーン的な規則性を持っていることを知っておくと、指の動きに迷いがなくなります。

典型的な指板配置

ギターでよく使われるオルタードの形は、多くの場合、ルートから見て「斜め上」に展開する形になります。例えば、6弦ルートのバレーコードの形から、人差し指を起点にして1フレット隣や上の弦へと指を伸ばしていく配置が一般的です。

特によく使われるのが、2弦や3弦あたりのテンション音を強調するパターンです。ハイフレット側へスライドしながら上昇する形は、ギター特有の減衰音と相まって、非常にセクシーなラインを構築できます。まずは特定のコードフォームに紐付いた「指の形」として、3〜4パターン程度を丸暗記してしまうのが、指板を攻略する近道です。

ギターで魅せるオルタードフレーズの作り方

スケールの形を覚えたら、次はそれを「音楽的なフレーズ」にする段階です。ただ順番に音を弾くだけでは練習曲のように聞こえてしまいます。ここでは、ギターの特性を活かした、カッコよく聞こえるフレーズの組み立てアイデアを具体的に解説します。

コードトーン中心のパターン

フレーズの「骨組み」をコードトーンで作り、その「肉付け」にオルタードの音を使うのが最も安定した方法です。例えば、G7で弾くなら「G(ルート) → B(3rd) → F(7th)」という動きの中に、A♭(♭9th)やB♭(#9th)を混ぜ込んでみます。

ギターの場合、和音を弾くのと同様の指の形で、音をバラバラに弾く「アルペジオ」にオルタード音を足す感覚が一番スムーズです。これにより、単なるスケール練習ではなく、しっかりとバックのコードを反映したフレーズが生まれます。最初の一歩として、ルートから3度、そして♭9度へと進むような、短いけれど説得力のあるラインを作ってみましょう。

半音上からのライン発想

オルタードらしい「アウト感」を出すコツは、目的のコードトーンに対して「半音上からアプローチする」ことです。例えば、G7の3度である「B(シ)」の音にたどり着きたいとき、あえて半音上の「C(ド)」や、オルタードの音である「B♭(シ♭)」から滑り込むように弾きます。

この半音のズレが、ジャズ特有の緊張と緩和を生み出します。ギターであれば、スライドやハンマリング・プルオフを使ってこの半音移動を強調すると、よりニュアンスのある演奏になります。ターゲットとする音を明確に決め、そこに向けてオルタードの音から「着地」する感覚を大切にしてください。

ペンタ混合の短リック

完全なオルタードフレーズが難しく感じる場合は、マイナーペンタトニックスケールのフレーズに1音だけオルタードの音を混ぜてみましょう。例えば、コードのルートから見て「半音上のマイナーペンタ」の音使いを、普段のペンタフレーズの合間に数音だけ挟み込みます。

この手法の素晴らしい点は、ロックやブルースに慣れたギタリストでも、違和感なくジャズの響きを取り入れられることです。全ての音をオルタードで埋め尽くそうとせず、馴染みのあるペンタの安心感と、オルタードの緊張感を交互に配置することで、非常に現代的で聴きやすいソロを構築できます。

ディミニッシュ接続のアイデア

オルタードスケールとディミニッシュコード(またはディミニッシュアルペジオ)は非常に親和性が高いです。ドミナントコードの時に、ルートの半音上から始まるディミニッシュアルペジオを弾くと、自然にオルタードの重要な音(♭9, 3, #11, 7)を網羅することができます。

この「ディミニッシュ経由」のアイデアは、指板上で対称的な形(3フレットおきの移動)を利用できるため、ギターでは非常に弾きやすいのが特徴です。オルタードスケールを複雑な階段として捉えるのではなく、ディミニッシュという馴染みのある「ひし形」のパターンを動かすことで、スピーディーでプロっぽいラインが完成します。

着地音の選び方

どんなに激しいオルタードフレーズを弾いても、最後の音がコードに合っていなければ「音を外しただけ」に聞こえてしまいます。重要なのは「着地点(解決)」です。オルタードの緊張感あふれるラインの後は、必ず次のコード(通常はIやIm)の安定した音に解決させましょう。

最も推奨されるのは、次のコードの3度や5度に着地することです。例えば、G7オルタードで散々アウトした後に、Cメジャーコードの「E(ミ)」の音に力強く着地すれば、それまでの緊張感が解消され、聴き手は大きなカタルシスを感じます。「どこで終わるか」を先に決めておくことが、オルタードを成功させる最大の秘訣です。

日々の練習でオルタードを身につけるステップ

オルタードを自由に操るためには、頭での理解を「指の反射」に落とし込む作業が必要です。毎日少しずつ、飽きずに続けられるシンプルな練習メニューをこなすことで、意識しなくても勝手にオルタードの音が指から溢れ出すようになります。

日次ドリルの最小セット

まずはウォーミングアップとして、特定のキーでのオルタードスケールの上行・下行を1日数回行います。この際、ただ音を出すのではなく、今弾いている音が「♭9」なのか「♭13」なのかといった度数を意識しながら弾くのが重要です。

次に、メトロノームを使って、8分音符や3連符でリズムをキープしながら弾く練習をします。速く弾く必要はありませんが、リズムがヨレないように注意しましょう。指が形を覚えるまで、同じポジションを徹底的に反復してください。この「基礎の型」がしっかりしていれば、本番でのアドリブに余裕が生まれます。

着地点意識のコード練習

次に、バッキングトラックやルーパーを使い、II-V-Iの進行に合わせて練習します。特に「V7」から「I」へ移る瞬間に集中しましょう。V7の最後の拍でオルタードの音を使い、Iの1拍目でターゲットノートにピタッと着地する練習を繰り返します。

この練習では、フレーズの長さよりも「着地の正確さ」を重視してください。最初は1音や2音だけでも構いません。オルタードの音が次のコードの安定した音に吸い込まれていく感覚を、耳と指で覚えることが目的です。これができるようになると、フレーズが「音楽的な文章」として機能し始めます。

短フレーズ反復メニュー

自分が「カッコいい」と思ったオルタードのリックを1つ選び、それを全12キーで練習します。これは「トランスポーズ(移調)」の練習になり、ギター指板の構造を深く理解するのに役立ちます。

同じフレーズでも、キーが変われば弦をまたぐ位置や指の使い方が変わることがあります。どんなキーでも同じフレーズが瞬時に出せるようになると、ジャズのスタンダード曲の複雑な転調にも対応できるようになります。1週間に1フレーズずつ、自分のお気に入りの「必殺技」を増やしていく感覚で楽しんで取り組みましょう。

バッキング合わせの練習

最後は、実践に近い形での練習です。ジャズのマイナスワン音源などを用意し、ソロの中でオルタードを意図的に使ってみます。ここでは、あえて「オルタードを使う場所」と「使わない場所(普通のメジャースケールやペンタ)」を明確に分けて弾き比べてみてください。

ずっとオルタードを使い続けると耳が疲れてしまいますが、要所で使うと非常に効果的であることが体感できるはずです。自分の演奏を録音して聴き返すのも非常に有効です。客観的に聴いて「今の着地は気持ちよかった」「ここは少し音が浮きすぎている」といった気づきを得ることで、フレーズの質は飛躍的に向上します。

おすすめ紹介

商品名特徴公式サイト
Ibanez George Benson シリーズジャズギターの巨匠モデル。オルタードフレーズも滑らかに弾ける高い演奏性。Ibanez公式サイト
ヤマハ THR30II Wireless繊細なクリーントーンが魅力の練習用アンプ。ジャズらしい音作りが自宅で手軽に。ヤマハ公式サイト
ダダリオ NYXL シリーズ耐久性と音程の安定感が抜群。複雑なスケール練習でもピッチが狂いにくい弦。D’Addario公式(英語)
BOSS RC-1 Loop Station最もシンプルなルーパー。II-V進行を録音して、オルタードの練習に最適。BOSS公式サイト

まずこれだけで始めるオルタード導入の一歩

オルタードスケールは決して「選ばれた人だけのもの」ではありません。まずは、今回紹介した以下の3点を意識することから始めてみてください。

  • V7コードの半音上のメロディックマイナーを弾いてみる: 理論は後回しでOKです。
  • 着地音は次のコードの3度にする: これだけでフレーズが解決した感じになります。
  • 短いリックを1つだけ覚える: 欲張らず、まずは「必殺の1本」を磨きましょう。

最初は指がもつれたり、音が変に聞こえたりするかもしれませんが、それは新しい響きに耳が慣れようとしている証拠です。この記事の内容をヒントに、ぜひあなたのギターソロに新しい色彩を加えてみてください。少しの緊張感が、あなたの演奏をぐっとプロフェッショナルなものに変えてくれるはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

バンドや音楽活動が、日常を少し楽しくしてくれる存在だと思っています。
ジャンルや楽器、活動の仕方を眺めているだけでも、世界が広がる感じが好きです。
このブログでは、音楽を始めたい人向けに、選び方や考え方を分かりやすくまとめています。ステージに立つ日も、部屋で音を鳴らす時間も、どちらも楽しい未来になりそうですね。

目次