ドラムの耳コピは、憧れの曲をマスターするために欠かせないスキルです。最初は難しく感じるかもしれませんが、ポイントを絞って聞き取ることで、確実に上達することができます。まずは、効率的に進めるために最初に意識すべき基本のステップから、わかりやすく丁寧に解説していきます。
ドラムの耳コピでまず押さえること
ドラムの耳コピを始める際、いきなり細かい音をすべて聞き取ろうとするのは挫折の原因になります。まずは一歩引いた視点で、曲の土台を理解することから始めましょう。全体像が見えてくると、驚くほど音が整理されて聞こえるようになります。
曲全体の構成確認
まずは楽器を持たずに、曲を最初から最後までじっくり聴いて、構成を把握します。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏といった区切りを意識し、どこでリズムが変わるのかをチェックしましょう。多くの楽曲では、セクションごとにメインとなるビートが決まっています。
例えば「サビでは派手なビート、Aメロでは落ち着いたリズム」といった変化をメモするだけでも、耳コピのハードルはぐっと下がります。構成を把握しておくことで、似たようなパターンの繰り返しに気づきやすくなり、実際に採譜する手間を大幅に減らすことができます。全体の流れを掴むことは、単なる音取り以上の大きなメリットをもたらします。
テンポと拍子の把握
次に、曲のテンポ(BPM)と拍子を確認します。多くのポップスやロックは4分の4拍子ですが、中には3拍子や変拍子が混ざる曲もあります。足でリズムを刻んだり、メトロノームアプリを使ったりして、一定の拍を感じ取れるようにしましょう。
正確なテンポを知ることは、後の作業効率に直結します。最近では楽曲のBPMを自動で解析してくれるサイトやアプリも多いので、それらを活用するのも一つの手です。拍子がわかれば「この小節には4つの拍がある」という枠組みができ、音がどのタイミングで鳴っているのかを推測しやすくなります。土台となる「軸」をしっかり決めることが、正確な耳コピへの第一歩です。
主要ビートの抽出
曲の構成とテンポがわかったら、各セクションを象徴するメインのビートを聞き取ります。一音ずつ完璧にする必要はなく、まずは「基本の8ビートか」「16ビートか」「シャッフルか」といった大まかな種類を特定しましょう。
ほとんどの曲は、一つのセクションにつき一種類の基本パターンで構成されています。その核となるリズムを一つ抜き出すことができれば、そのセクションの耳コピは半分終わったようなものです。細かい装飾音は後回しにして、まずは骨組みとなる主要なビートを特定することに集中してください。これにより、作業全体のスピードが格段に上がります。
スネアとキックの重点聴取
ドラムセットの中で最も重要なのが、バスドラム(キック)とスネアドラムの組み合わせです。この二つはリズムの根幹を成すため、ここを正確に聞き取ることが耳コピの成功を左右します。他のシンバルやタムの音に惑わされず、まずは「ドン」という低音と「タン」という鋭い音に耳を澄ませましょう。
聴き取りにくい場合は、低音を強調するイコライザー機能を使ったり、ヘッドホンの位置を微調整したりして、キックの配置を明確にします。スネアは2拍目と4拍目に来ることが多いですが、キックのパターンには曲の個性が強く表れます。この二つの楽器の関係性を書き出すことで、ドラムの最も重要な役割である「ノリ」を再現できるようになります。
フィルの骨組み記録
曲の節目に入るフィルイン(おかず)は、耳コピの難所の一つです。しかし、これもよく聴くと「タカタカ」といった特定のリズムに基づいています。細かい叩き分けを確認する前に、まずはそのフィルが何拍目から始まって、どのようなリズムの塊(16分音符なのか3連符なのか)で構成されているかを記録します。
音の高さ(タムの種類)にこだわりすぎると混乱するため、まずはスネア一つだけでそのリズムを叩けるようになるまで聴き込みましょう。リズムの骨組みさえ合っていれば、ドラムとしての機能は十分に果たせます。複雑に見えるフィルも、分解してみればシンプルな要素の組み合わせであることが多いです。
短時間練習の設定
耳コピは非常に集中力を使う作業です。長時間ダラダラと続けるよりも、「今日はサビの8小節だけを完璧にする」といったように、15分から30分程度の短い単位で区切って集中することをおすすめします。
耳が疲れてくると、音の判別能力が著しく低下し、本来聞こえるはずの音も見失ってしまいます。少しでも「聞こえない」と行き詰まったら、一度その日は切り上げるか、別の作業に移るのが賢明です。リフレッシュした状態で改めて聴くと、不思議とすんなり解決することがよくあります。継続のために、自分に無理のないペース配分を心がけましょう。
段階を区切る耳コピの進め方
全体の流れを掴んだ後は、細部を煮詰めていく段階に入ります。ここでも一気に進めようとせず、作業を小さく区切ることが正確性を高める秘訣です。プロも実践する段階的なアプローチを紹介します。
小節単位の区切り
耳コピをする際は、必ず数小節ごとの短い単位に区切って進めます。例えば「4小節」を一区切りに設定し、その範囲内の音が完全に把握できるまで何度も繰り返し聴きます。広範囲を一気にやろうとすると、前の小節の記憶が薄れてしまい、結果的に二度手間になります。
小節の区切りを意識することで、「どこに音が配置されているか」という空間的な把握も正確になります。また、4小節や8小節といった区切りは音楽の構造とも一致しやすいため、パターンの変化にも気づきやすくなります。地味な作業に思えますが、この積み重ねが最も確実な近道です。
パート別ループ再生
現代のツールを使えば、特定の区間を自動でループ(繰り返し)再生させることが可能です。聞き取りにくいフレーズに出会ったら、その部分だけを延々とループさせ、意識を一つの楽器に絞って聴きましょう。
最初はハイハットだけを追い、次にスネア、その次にキックといったように、聴く楽器を一つずつ変えていく「パート別聴取」を行うと、複雑な絡み合いが解きほぐされて見えてきます。全体をぼんやり聴くのではなく、一点に集中してループ再生を聴き続けることで、埋もれていたゴーストノートや細かいシンバルのニュアンスが浮き上がってきます。
テンポ同期の調整
どうしても速くて聞き取れない場合は、再生速度を落とすのが非常に有効です。最近のプレイヤーはピッチ(音の高さ)を変えずに速度だけを半分にする機能などが充実しています。スロー再生で確認することで、音が鳴る順番や微細な強弱の変化をはっきりと捉えることができます。
また、ドラムソフトやDAWを使っている場合は、曲のテンポをプロジェクトのテンポに合わせる「同期」を行うと、グリッド線を見ながら正確なタイミングを確認できます。耳だけに頼らず、視覚的な情報や速度調整を組み合わせることで、難解なフレーズも確実に解読できるようになります。
パターンの譜面化
聞き取った音は、忘れないうちに譜面に書き出すか、DAWの打ち込み画面(ピアノロールなど)に記録しましょう。記憶だけに頼ると、練習しているうちに細部が書き換わってしまうことがよくあります。
五線譜が苦手な場合は、自分なりの記号を使った「ドラムタブ譜」でも構いません。大切なのは、後で見返したときに「どの楽器をどのタイミングで叩くか」が一目でわかることです。文字や図に書き起こすプロセスを通ることで、頭の中のイメージが整理され、自分の演奏にフィードバックしやすくなります。
精度チェックの繰り返し
一度耳コピが終わったと思っても、そこからが仕上げの段階です。自分で叩いてみた録音と原曲を聴き比べたり、原曲に合わせて一緒に叩いてみたりして、違和感がないかを確認します。
「何かが違う」と感じたときは、多くの場合、キックのタイミングやアクセントの有無に原因があります。再度、細部をチェックして修正する作業を繰り返すことで、耳コピの精度はどんどん高まっていきます。この「確認と修正」のサイクルを回すことが、音を聴き分ける能力そのものを鍛えるトレーニングにもなります。
耳コピを加速する機材とアプリ
便利なツールを使いこなすことで、耳コピの効率は劇的に向上します。最新の機能を備えたおすすめのアイテムを活用して、作業をもっと快適に進めましょう。
速度調整プレイヤー
音程を変えずに再生速度を自在に変更できるプレイヤーは、耳コピの必須アイテムです。特に、速いフィルや複雑な16分音符の裏に入るキックなどを確認する際に威力を発揮します。
おすすめの耳コピ支援ツール
| ツール名 | ジャンル | 特徴 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| ヤマハ MyMusicPlayer | アプリ | テンポ変更やリピート機能が充実しており、楽器練習に最適。 | ヤマハ公式サイト |
| Amazing Slow Downer | ソフトウェア | 高品質な速度変更が可能。プロの利用者も多い定番ソフト。 | Roni Music公式サイト |
| Transcribe! | ソフトウェア | 波形を見ながらの区間指定や、特定の周波数強調が容易。 | Seventh String公式サイト |
区間ループアプリ
特定の範囲をABリピートできるアプリは、スマホ一つで手軽に耳コピができるため非常に便利です。多くの練習用アプリには、1小節単位や任意の秒数でループを組める機能が備わっています。
これを使うと、両手がふさがっているドラムの練習中でも、足元や手元の操作だけで同じフレーズを何度も確認できます。最近では、YouTubeの特定の区間をループ再生できるブラウザ拡張機能やサイトも存在します。隙間時間を使って少しずつ聞き取りを進める際にも重宝します。
波形表示ツール
音を視覚的に捉えることができる波形表示ツール(DAWなど)を使うと、耳コピの精度が飛躍的に上がります。「ドン」というキックの音や「タン」というスネアの音は、波形で見ると特定の形として現れるため、音が重なって聞こえにくい場所でもタイミングを特定しやすくなります。
波形の山を確認しながら「ここが3拍目の裏だ」と視覚的に裏付けを取ることで、感覚だけに頼らない正確な採譜が可能になります。また、特定の帯域だけをカットするフィルター機能を使えば、ハイハットの音だけを浮かび上がらせるといった工夫も可能です。
高遮音イヤホン
耳コピにおいて、外部の雑音を遮断し、細かい音まで再現できるイヤホンは投資価値が非常に高い機材です。特に低音の解像度が高いモデルを選ぶと、ベースに埋もれがちなバスドラムの輪郭がはっきり見えてきます。
遮音性が高いタイプであれば、小さな音量でも細部まで聞き取れるため、耳への負担を軽減できるというメリットもあります。オーバーイヤー型のヘッドホンも良いですが、耳の穴に密着するインイヤーモニター(イヤモニ)タイプは、ドラムの大きな音の中でも自分の演奏をモニターしながら原曲を聴けるため、特におすすめです。
リピート機能付きソフト
PCでじっくり作業する場合は、リピート機能に特化した専用ソフトが強力です。単なるループだけでなく、「5回繰り返したら速度を5%上げる」といった自動練習機能を持つものもあります。
これにより、耳コピしたフレーズをそのまま練習に移行でき、技術の定着まで一貫して行えます。録音された波形の上にメモを残せる機能があるソフトを使えば、後から見返したときの混乱も防げます。デジタルツールを賢く使うことで、アナログな耳の力を最大限に引き出すことができます。
厄介なフレーズの聞き取り技
どうしても聞き取れない、そんな時に使える具体的なテクニックを解説します。ドラム特有の「聞こえ方のクセ」を理解することで、難解なパッセージの正体が見えてきます。
ゴーストノートの識別
スネアの合間に入る極小音の「ゴーストノート」は、全体のノリを作る重要な要素ですが、聞き取りが最も難しい部分でもあります。これを見つけるコツは、アクセントのない部分で「かすかに鳴っている空気感」に注目することです。
再生速度を極限まで落とすと、それまで聞こえなかった「トッ」という小さな打撃音が浮かび上がることがあります。また、スネアの音が少し太く、あるいは長く聞こえる箇所には、直前や直後にゴーストノートが隠れている可能性が高いです。音そのものを探すというより、リズムの密度に変化がある場所を疑ってみましょう。
複雑フィルの細分化
タムを多用する複雑なフィルは、一度にすべてを解読しようとせず、パーツごとに分解します。まずは「右手だけで叩いている音」と「左手だけで叩いている音」を推測し、手順を考えてみます。
多くのフィルは交互連打(シングルストローク)や特定のルーディメンツに基づいています。自分が叩きやすい手順を当てはめてみて、原曲のニュアンスに近くなるものを探す「推測と検証」のアプローチが有効です。また、タムの音は低音から高音まで並んでいるため、音程の変化を追うことで、どの太鼓を叩いているかを特定できます。
ハイハット開閉の判別
ハイハットのクローズ、ハーフオープン、オープンの使い分けは、曲のダイナミクスを左右します。オープンの場合は「シャーン」という余韻が長く、クローズは「チッ」と短く鳴ります。
特に、8ビートの中で時折混ざる「チッ・チ・シャー」というアクセントは、右手の動きだけでなく左足のタイミングも重要です。オープンからクローズに戻る瞬間の「チッ」というミュート音に注目すると、どのタイミングで足を閉じているかがはっきりします。シンバルの余韻の長さを注視することで、足の動作まで見えてくるようになります。
タムの定位確認
ステレオ録音された楽曲では、タムの音は左右に振り分けられていることが多いです。ヘッドホンで聴いた際に、右から聞こえるか左から聞こえるかを確認することで、叩いているタムを特定できます。
一般的には、高音のタム(ハイタム)が左寄り、低音のタム(フロアタム)が右寄りに配置されていることが多い(右利きセッティングの場合)です。音が移動していく方向を意識することで、フィルインの順序が明確になります。中央から少しずつ右へ流れていれば「ハイ→ロー→フロア」という基本の流れだと判断できます。
低域キックの分離聴取
バスドラムはベースギターと周波数が重なりやすく、非常に聞き取りにくい楽器です。これを攻略するには、ベースの「音程感のある音」ではなく、キックの「アタック音(ペダルがヘッドを叩くパチッという音)」を探すのがコツです。
イコライザーで超低域をカットし、逆に3kHzあたりの高域を少し持ち上げると、キックのクリック音が際立って聞こえるようになります。また、最近のAI音源分離サービスを利用して、ドラムトラックだけを抽出するのも非常に有効な手段です。テクノロジーを味方につけて、物理的に分離させることで迷いをなくせます。
採譜と譜面作成を効率化する方法
聞き取った内容を正確に形に残すことは、将来の自分への大きなギフトになります。読みやすく、かつ作成に時間をかけすぎない効率的な採譜のコツを紹介します。
拍子と小節の表記
譜面を書く際は、まず最初に全小節分の枠組みを書いてしまうのが効率的です。4小節ごとに改行するなど、ルールを決めておくと全体像が把握しやすくなります。
また、リピート記号を積極的に使いましょう。同じパターンの繰り返しを律儀にすべて書く必要はありません。基本パターンを1小節書き、「同様に繰り返す」という指示を入れるだけで、譜面は一気にスッキリします。大切なのは情報の密度ではなく、演奏中に迷わないための分かりやすさです。
パート別譜面整理
ドラム譜は、音符の位置で楽器を書き分けます。一般的には、一番上がシンバル類、中央付近がスネアやタム、一番下がバスドラムとなります。このルールを徹底することで、一目で全体のバランスが確認できるようになります。
まずはキックとスネアの「足と手」の関係を先に書き込み、その後にハイハットやライドの刻みを加筆するという二段階の手順を踏むと、書き間違いが少なくなります。重なり合う音をレイヤー(層)として捉えて整理していくのが、綺麗な譜面を作成するポイントです。
フィル表記のルール
フィルインの箇所は、音符を詰め込みすぎると読みづらくなります。あまりに細かい装飾音は小さな音符(装飾音符)で書くか、思い切ってニュアンスだけをメモする程度にとどめるのも一つの手です。
特に、スネアのロールや細かい連打は、斜線を入れた略記法を使うと見た目が簡潔になります。自分が再現したいポイントが「リズムの正確さ」なのか「叩く太鼓の順番」なのかを明確にし、優先順位が高い情報を強調して書くようにしましょう。
省略記号の活用
ドラムは反復の多い楽器ですので、省略記号は積極的に活用すべきです。「%」のような記号(前小節の繰り返し)を使えば、書く手間を大幅に省けます。また、AメロやBメロといったセクション名を大きく記入し、構成が一目でわかるようにします。
「ここはハイハットをオープン気味に」「ここはリムショットで」といった言葉による指示も、無理に音符で表現しようとするより分かりやすい場合があります。演奏するためのガイドとして機能させることを最優先に考えましょう。
デジタル譜の出力
最近では、PCやタブレットで動作する譜面作成ソフトが非常に高性能になっています。マウス操作やMIDI入力で音符を置いていけば、自動で整った譜面が完成します。
デジタルで作成する最大の利点は、修正が容易であることと、作成した譜面をMIDI音源で再生して確認できることです。自分が書いたリズムが原曲と同じノリで聞こえるか、再生してチェックすることで、採譜ミスを未然に防げます。また、PDFとして出力すれば、メンバーとの共有やスマホでの確認もスムーズに行えます。
次の一歩と継続の指針
ドラムの耳コピは、やればやるほど耳が鍛えられ、最初は塊にしか聞こえなかった音がバラバラに解けて聞こえるようになっていきます。まずは自分の好きな曲の一節からで構いません。完璧を求めすぎず、楽しみながら音の正体を探ってみてください。
継続のコツは、難しすぎる曲にいきなり挑戦しないことです。今の自分のスキルで「8割くらいは分かりそう」というレベルの曲から始めることで、成功体験を積み重ねることができます。耳コピができるようになると、好きなドラマーの隠れたこだわりや、楽曲に込められた意図がより深く理解できるようになり、あなたのドラム人生はもっと豊かなものになるはずです。応援しています。“`
