音楽用語ritの意味と弾き方が分かる遅くする指示の読み方

楽譜の中に出てくる「rit.」は、意味だけなら「だんだん遅く」と覚えればよい音楽用語です。ただし、実際に演奏するときは、どこから遅くするのか、どれくらい遅くするのか、次のテンポにどう戻るのかで迷いやすくなります。

この記事では、rit.の基本的な意味だけでなく、似た用語との違い、演奏でのかけ方、合奏や伴奏でずれないための確認ポイントまで整理します。楽譜を見て止まらず、自分の演奏に合わせて判断できる状態を目指しましょう。

目次

音楽用語ritはだんだん遅くする指示

音楽用語のritは、イタリア語のritardandoを短く書いた形で、意味は「だんだん遅くする」です。楽譜では「rit.」と省略して書かれることが多く、曲の終わり、フレーズの区切り、雰囲気を落ち着かせたい場面などでよく使われます。急に止まるのではなく、テンポを少しずつゆるめて、音楽に余韻やまとまりを作るための指示だと考えると分かりやすいです。

ただし、rit.は「何拍で何%遅くする」というように、数字で完全に決まっている指示ではありません。作曲者や編曲者が「ここは自然に緩めてほしい」と示している記号なので、曲の速さ、拍子、フレーズの長さ、次に出てくる指示によって演奏の仕方が変わります。ピアノの独奏なら自分の呼吸で調整できますが、吹奏楽、合唱、バンド、伴奏付きの演奏では、全員が同じ感覚で遅くしないと音がずれてしまいます。

まずは、rit.を見たら「ここから曲の流れを少しずつ遅くする」「次のテンポ指示や区切りまでに自然に収める」と考えるのが基本です。遅くしすぎると音楽が重くなり、遅くしなさすぎると指示の意味が伝わりません。大切なのは、用語の意味を暗記するだけでなく、楽譜全体の流れを見て、どのくらいの幅でテンポをゆるめるかを判断することです。

表記読み方基本の意味演奏での考え方
rit.リットだんだん遅く急に止めず、拍の間隔を少しずつ広げる
ritardandoリタルダンドだんだん遅くrit.の正式な表記として考える
a tempoア・テンポ元の速さでrit.で遅くした後、元のテンポに戻す合図
Tempo Iテンポ・プリモ最初の速さで曲の冒頭のテンポに戻る合図

ritを読む前に見ること

どこまで遅くするかを確認する

rit.を見つけたときに最初に確認したいのは、遅くし始める場所と、遅くする終点です。楽譜ではrit.の文字が書かれている場所からテンポをゆるめることが多いですが、実際にはその直前のフレーズの流れから少しずつ準備する場合もあります。特に歌や管楽器では、息の流れやフレーズの山を考えながら遅くするため、文字が出た瞬間だけを機械的に見ると不自然になることがあります。

終点としてよく目印になるのは、次の小節線、フェルマータ、終止の和音、a tempo、Tempo I、新しい速度記号などです。たとえば2小節だけrit.がかかる場合と、4小節かけて大きく落ち着かせる場合では、テンポの落とし方が変わります。短い範囲で急に遅くすると、聴いている人には止まりそうに聞こえることがありますし、長い範囲でほとんど変化しないと、rit.の効果が薄くなります。

練習では、rit.の文字だけに丸を付けるのではなく、終点にも印を付けると判断しやすくなります。「この2小節で少し遅くする」「最後の4拍で落ち着かせる」「フェルマータに向かって広げる」のように、自分の言葉で範囲を決めると、演奏中に迷いにくくなります。合奏の場合は、指揮者や主旋律の人がどこでテンポを動かすかを共有することも大切です。

次のテンポ指示を見る

rit.は単独で読むよりも、その後に何が書かれているかを見ることで意味がはっきりします。rit.の後にa tempoがあれば、遅くしたあとに元の速さへ戻ります。Tempo Iがあれば、曲の最初のテンポに戻る意味です。新しく「Andante」「Allegro」「♩=80」のような速度記号が出ていれば、そこから別の速さに入ると考えます。

初心者が間違えやすいのは、rit.で遅くしたあと、そのままずっと遅いテンポで弾き続けてしまうことです。楽譜にa tempoがあるのに見落とすと、曲全体が予定より遅くなり、伴奏や他のパートと合わなくなります。逆に、a tempoがない場合でも、フレーズが終わって次の場面に入るところで自然にテンポを整える必要があることもあります。

特にピアノ伴奏、合唱、バンド演奏では、次のテンポの入り方が重要です。ボーカルがrit.で感情を込めすぎて遅くしたのに、伴奏が元のテンポで進むと、歌とコードがずれて聞こえます。ドラムやベースがいる曲では、誰がテンポを支えるのかを決めておくと安心です。rit.を読むときは、必ず「遅くしたあと、どの速さに着地するのか」までセットで確認しましょう。

似た音楽用語との違い

ritとrallの違い

rit.と似た用語にrall.があります。rall.はrallentandoの省略で、こちらも「だんだん遅くする」という意味で使われます。意味だけを見るとほとんど同じに感じますが、演奏の印象としては、rit.はテンポを遅くする指示、rall.はテンポだけでなく音楽全体をゆるめて落ち着かせる指示として扱われることがあります。

ただし、楽譜や先生によって説明の仕方には幅があります。すべての曲で「rit.は軽く、rall.は重く」と機械的に決めるより、曲の場面を見て判断するほうが自然です。たとえば曲の終わりにrall.が出ている場合は、音量も少し弱まりながら余韻を作ることがあります。一方で、rit.が出ている場合でも、終止に向かって十分に落ち着かせる必要がある場面もあります。

見分けるときは、用語だけでなく、強弱記号、スラー、終止形、伴奏の動き、メロディの高さを一緒に見ましょう。クレッシェンドが付いているrit.なら、遅くしながら音楽を高めることがあります。デクレッシェンドが付いているrall.なら、力を抜いて収める印象になります。rit.とrall.の違いを厳密に暗記するより、「どんな雰囲気で遅くするのか」を読み取ることが演奏では役に立ちます。

accelやa tempoとの関係

rit.の反対に近い用語としてaccel.があります。accel.はaccelerandoの省略で、「だんだん速くする」という意味です。rit.が拍の間隔を少しずつ広げる指示だとすれば、accel.は拍の間隔を少しずつ狭める指示です。どちらも急にテンポを変えるのではなく、段階的に変化させる点が共通しています。

また、rit.とセットでよく出てくるのがa tempoです。a tempoは「元の速さで」という意味なので、rit.で遅くなったあとに、元のテンポへ戻る合図になります。ここを見落とすと、遅くした雰囲気のまま次のフレーズに入ってしまい、曲の流れが重くなることがあります。特にクラシック、合唱曲、吹奏楽曲では、a tempoの位置を確認するだけで演奏の安定感が大きく変わります。

練習では、rit.だけを単独で読むのではなく、「rit.からa tempoまで」をひとまとまりで見るのがおすすめです。たとえば「2小節かけて遅くし、a tempoで元に戻る」「最後の1拍だけ広げて、次の小節から通常テンポに戻る」というように、テンポ変化の地図を作る感覚です。楽譜の余白に「戻る」「ここで元速」などと書いておくと、本番でも見落としにくくなります。

用語意味ritとの違い迷ったときの見方
rall.だんだん遅くrit.より全体をゆるめる印象で使われることがある強弱や終止感も一緒に見る
accel.だんだん速くrit.とは反対方向のテンポ変化どこまで速くするかを確認する
a tempo元の速さでrit.の後にテンポを戻す合図戻る位置を楽譜に印する
fermata音や休符を伸ばすテンポを遅くするのではなく、その音を保つ指示止める場所と再開の合図を見る

ritの演奏で迷わないコツ

拍を消さずに遅くする

rit.を演奏するときに大切なのは、テンポを遅くしても拍の流れを消さないことです。初心者の演奏では、rit.を見た瞬間に急に止まりそうになったり、最後の音だけ長く伸ばしたりすることがあります。しかしrit.は「だんだん遅くする」指示なので、拍と拍の間隔を少しずつ広げる意識が必要です。1拍目だけ急に長くしたり、最後の小節だけ極端に重くしたりすると、聴いている人には不自然に聞こえます。

まずはメトロノームなしで弾く前に、手拍子や足拍子で拍の幅を感じる練習をすると分かりやすいです。たとえば4拍かけてrit.するなら、1拍目はほぼ元のテンポ、2拍目で少し広げ、3拍目でさらに余裕を作り、4拍目で着地するようにします。言葉で「いち、にい、さーん、よーーん」と伸ばす感覚を作ると、急停止ではなく自然な遅さになります。

ピアノやギターでは、指の動きだけで遅くしようとすると音がばらつくことがあります。右手と左手、メロディと伴奏、コードチェンジのタイミングをそろえながら遅くすることが大切です。歌では、母音を伸ばしすぎて次の子音が遅れないように注意します。ドラムやベースでは、フィルインやルート音が走らないように、曲全体を支える意識が必要です。

フレーズの終わりで考える

rit.は、曲の中で「区切り」を作るために使われることが多い音楽用語です。そのため、どの音を長くするかだけでなく、どのフレーズを収めるためのrit.なのかを考えると演奏しやすくなります。メロディが上がりきったあとに落ち着く場面、歌詞の大事な言葉を伝える場面、曲の最後の和音に向かう場面では、テンポのゆるめ方が音楽の表情に直結します。

たとえば合唱で「ありがとう」のような言葉の最後にrit.がある場合、単にテンポを遅くするだけではなく、言葉の意味が自然に届くように息を使います。ピアノ曲でカデンツァのあとにrit.がある場合は、次の和音へ急がず、響きが落ち着く時間を作ります。ギターの弾き語りでは、歌の語尾とコードチェンジを合わせながら、次の小節へ無理なくつなげる必要があります。

判断の基準は、「聴く人が次の場面に入る準備をできるか」です。rit.が短すぎると、フレーズの終わりが慌ただしくなります。反対に長すぎると、曲の流れが止まり、感情を入れすぎたように聞こえることがあります。楽譜に書かれたスラー、休符、終止線、強弱記号を見ながら、フレーズが自然に息をする場所を探すと、rit.のかけ方が安定します。

失敗しやすいritの読み方

いきなり遅くしすぎる

rit.でよくある失敗は、最初の拍から急にテンポを落としすぎることです。特に「遅くしなければ」と強く意識すると、rit.の文字を見た瞬間に演奏がブレーキをかけたようになります。これでは「だんだん遅く」ではなく「急に遅く」になってしまい、メロディの流れや伴奏のリズムが崩れやすくなります。

急に遅くなる原因は、rit.の範囲を決めないまま演奏していることが多いです。どこまでにどれくらい遅くするかを決めていないと、最初に大きく遅くしてしまい、後半でさらに遅くする余地がなくなります。短距離走で最初から止まりかけるような状態なので、最後の音だけ不自然に伸びたり、次のテンポに戻れなくなったりします。

対策としては、rit.の始まりを小さく、終わりに向かって少しずつ広げる意識を持つことです。2小節のrit.なら、最初の小節は「少し余裕を持つ」程度にして、最後の小節で落ち着かせると自然に聞こえます。録音して聴くと、自分では控えめに遅くしたつもりでも、実際にはかなり大きく変化していることがあります。rit.は自分の感覚より少し整理してかけるくらいが、合奏や録音ではまとまりやすいです。

周りと合わなくなる

合奏や伴奏付きの演奏では、rit.で周りと合わなくなることがあります。ピアノ伴奏が先に遅くなり、歌が元のテンポで進んでしまう場合もありますし、指揮者がテンポを広げているのに、打楽器やベースが同じ速さで進んでしまう場合もあります。rit.は一人ひとりが自由に遅くする指示ではなく、全員で同じ方向にテンポを動かす指示です。

周りとずれる原因の一つは、誰を基準にするかが決まっていないことです。合唱では指揮者、バンドではドラムやボーカル、ピアノ伴奏では主旋律や伴奏者の呼吸が基準になることがあります。どのパートがテンポを引っ張るのかを決めずに演奏すると、全員が少しずつ違うrit.をかけてしまい、最後の和音や次の入りがそろいにくくなります。

練習では、rit.の箇所だけを取り出して、何度かテンポの動きを確認すると効果的です。「ここから少し遅くする」「この音で一番広げる」「次の小節でa tempoに戻る」のように、言葉で共有するとずれが減ります。指揮者がいる場合は、手の動きだけでなく、息を吸うタイミングや目線も見ましょう。伴奏者と合わせる場合は、最後の音をどちらが待つのか、次の入りをどちらが出すのかを確認しておくと安心です。

ritを自然に身につける練習

メトロノームを外す前に整える

rit.は自由にテンポを動かす指示ですが、最初から感覚だけで練習すると崩れやすくなります。まずは元のテンポで正確に弾けるようにしてから、少しずつrit.を加えるほうが安定します。元の拍があいまいなまま遅くしようとすると、どこがrit.で、どこが単なるテンポの乱れなのか分からなくなるためです。

おすすめは、最初にメトロノームで通常テンポを確認し、次にメトロノームを止めて同じ箇所を弾く方法です。そのあと、rit.の範囲だけを取り出し、どの拍でどれくらい広げるかを決めます。たとえば4拍の中で遅くするなら、最初の2拍は元のテンポに近く、後半の2拍でゆるめるなど、変化の配分を考えます。慣れてきたら、録音して聴き、止まりすぎていないか、変化が伝わるかを確認します。

メトロノームを使うときは、rit.中もクリックに合わせ続ける必要はありません。大切なのは、rit.に入る前のテンポを体に入れることです。元の速さが分かっているからこそ、どれくらい遅くなったのか判断できます。練習の最後には、楽譜を見ながら一曲の流れで弾き、rit.が曲全体の表情として自然に聞こえるかを確認しましょう。

録音して聴き直す

rit.の練習では、自分の演奏を録音して聴くことがとても役立ちます。演奏している最中は、気持ちが入るほど「自然に遅くできている」と感じやすいものです。しかし録音を聴くと、思ったより急に遅くなっていたり、逆にほとんど変化していなかったりすることがあります。特に曲の終わりのrit.は、演奏者の感覚と聴き手の印象がずれやすい部分です。

録音を聴くときは、上手か下手かだけで判断しないことが大切です。確認したいのは、テンポの変化が段階的になっているか、メロディと伴奏がそろっているか、次のa tempoに自然につながっているかです。スマートフォンの録音でも十分なので、rit.の前後4小節くらいを何パターンか録り比べると、自分に合う遅さが見つかりやすくなります。

合奏の場合は、全体録音を聴いて、最後の和音がそろっているか、主旋律が埋もれていないか、伴奏が先に止まっていないかを確認しましょう。rit.は目立つ表現だからこそ、全員が大きくやりすぎると重たくなります。主旋律が自然に歌い、伴奏が支え、低音や打楽器がテンポの土台を保つことで、音楽としてまとまったrit.になります。

楽譜でritを見たら次にすること

楽譜でrit.を見たら、まず「だんだん遅くする」と意味を押さえたうえで、始まりと終わりを確認しましょう。次に、a tempo、Tempo I、フェルマータ、新しい速度記号が近くにあるかを見ます。これだけで、ただ遅くするだけなのか、元のテンポに戻るのか、曲の終わりに向かって落ち着くのかが判断しやすくなります。

実際の練習では、rit.の箇所だけを切り出して、拍を数えながら少しずつ遅くしてみてください。最初は大げさに遅くするより、元のテンポを保ちながら最後に少し広げるくらいから始めると失敗しにくいです。慣れてきたら、曲の雰囲気、歌詞、メロディの山、強弱記号に合わせて調整します。独奏なら自分の呼吸を大切にし、合奏なら指揮者や主旋律、伴奏者と着地点をそろえることが大切です。

rit.は、正解が一つだけに決まる音楽用語ではありません。だからこそ、意味を暗記するだけでなく、楽譜の前後を見て「どのように遅くすると自然に聞こえるか」を考える必要があります。迷ったときは、範囲を決める、次のテンポ指示を見る、録音して聴く、周りと合わせるという順番で確認しましょう。そうすれば、rit.は怖い記号ではなく、曲に余韻や表情を加えるための分かりやすい合図になります。

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この記事を書いた人

バンドや音楽活動が、日常を少し楽しくしてくれる存在だと思っています。
ジャンルや楽器、活動の仕方を眺めているだけでも、世界が広がる感じが好きです。
このブログでは、音楽を始めたい人向けに、選び方や考え方を分かりやすくまとめています。ステージに立つ日も、部屋で音を鳴らす時間も、どちらも楽しい未来になりそうですね。

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